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大阪地方裁判所 平成6年(行ウ)93号 判決

原告

新三菱タクシー株式会社

右代表者代表取締役

升田毅

原告

三菱タクシー株式会社

右代表者代表取締役

笹井良則

原告

三菱交通株式会社

右代表者代表取締役

村上雅一

原告

三菱興業株式会社

右代表者代表取締役

中村時雄

右原告ら訴訟代理人弁護士

道下徹

豊島時夫

川見公直

浜田行正

西野淑子

柴田美喜

吉川法正

被告

近畿運輸局大阪陸運支局長

石坂勝治

右指定代理人

川口泰司

外三名

主文

一  原告らの請求をいずれも棄却する。

二  訴訟費用は、原告らの負担とする。

事実及び理由

第一  請求

一  原告新三菱タクシー株式会社

原告新三菱タクシー株式会社の平成六年五月二〇日付け被告に対する別紙目録一の一記載の一般乗用旅客自動車運送事業の事業計画(事業用自動車の総数及び営業所別配置車両数)変更認可申請に対し、被告が平成六年七月四日付け近運大旅第五五二一七号をもって同原告に対してなした処分のうち、事業用自動車七台の認可をなさなかった部分を取消す。

二  原告三菱タクシー株式会社

原告三菱タクシー株式会社の平成六年五月二〇日付け被告に対する別紙目録二の一記載の一般乗用旅客自動車運送事業の事業計画(事業用自動車の総数及び営業所別配置車両数)変更認可申請に対し、被告が平成六年七月四日付け近運大旅第五五二一八号をもって同原告に対してなした処分のうち、事業用自動車一二台の認可をなさなかった部分を取消す。

三  原告三菱交通株式会社

原告三菱交通株式会社の平成六年五月二〇日付け被告に対する別紙目録三の一記載の一般乗用旅客自動車運送事業の事業計画(事業用自動車の総数及び営業所別配置車両数)変更認可申請に対し、被告が平成六年七月四日付け近運大旅第五五二一九号をもって同原告に対してなした処分のうち、事業用自動車五台の認可をなさなかった部分を取消す。

四  原告三菱興業株式会社

原告三菱興業株式会社の平成六年五月二〇日付け被告に対する別紙目録四の一記載の一般乗用旅客自動車運送事業の事業計画(事業用自動車の総数及び営業所別配置車両数)変更認可申請に対し、被告が平成六年七月四日付け近運大旅第五五二二〇号をもって同原告に対してなした処分のうち、事業用自動車六台の認可をなさなかった部分を取消す。

第二  事案の概要

一  本件は、タクシー事業者である原告らが、関西国際空港開港に伴い導入された「空港専用タクシー」に係る増車申請を行ったのに対し、被告がいずれも増車申請両数の一部のみを認可し、残りを認可しなかったことについて、実体上及び手続上の違法があるとして、右不認可部分の取消しを求めた事案である。

二  本件処分(当事者間に争いがない。)

1  原告らは、いずれも、大阪市域を中心として、道路運送法(以下「法」という。)三条一号ハに規定する一般乗用旅客自動車運送事業(以下「タクシー事業」という。)を営む株式会社である。

2  原告らは、平成六年五月二〇日、それぞれ、被告に対し、別紙目録一ないし四の各一記載の「一般乗用旅客自動車運送事業の事業計画(事業用自動車の総数及び営業所別配置車両数)変更認可申請」(以下「本件増車申請」という。)をなした。本件増車申請は、いずれも、関西国際空港の開港を控えて導入された「空港専用タクシー(以下「空港専用タクシー」という。)の増車に係るものである。

3  被告は、平成六年七月四日、原告らの本件増車申請に対し、それぞれ、別紙目録一ないし四の各二記載の処分(以下「本件処分」という。)をなした。

これは、いずれも申請可能両数(後記三4参照)の四〇パーセント相当両数のみを認可し、六〇パーセント相当両数は認可しないものである。

4  原告らは、本件処分に対し、いずれも、平成六年八月二日付けで、近畿運輸局長(以下「運輸局長」という。)に対し、審査請求の申立てをしたが、いずれも同年一二月一四日付けで審査請求を棄却する旨の裁決がなされた。

三  本件処分に至る経緯

(以下において、証拠等が摘示されていない項目は、当事者間に争いがない。)

1(一)  法は、タクシー事業の開始について免許制を採用し(四条)、同事業の免許要件の一つとして免許基準を定め(六条一項一号ないし五号)、既に免許を受けて開業した事業者が増車を図るなど従前の事業計画(運輸省令で定める軽微な事項を除く。)を変更する場合においても、新規免許を与える場合と同様、事業の公共性、公益性の観点から認可制を採用し(一五条一項)、認可の可否についても右免許基準に関する規定を準用している(一五条二項)。

(二)  しかし、右免許基準の各号の要件は、それぞれ抽象的、概括的であることから、法八八条一項及び道路運送法施行令(以下「施行令」という。)一条二項に基づき運輸大臣から免許権限の委任を受けた運輸局長は、「一般乗用旅客自動車運送事業(一人一車制個人タクシーを除く。)の免許申請に関する資格要件について」と題する公示(以下「資格基準」という。)及び「一般乗用旅客自動車運送事業(一人一車制個人タクシーを除く。)の免許及び事業計画変更認可に係る需給に関する審査基準について」と題する公示(以下「需給基準」という。)により、右各要件を具体的に審査判定する基準を定めている。

このうち資格基準は、免許申請をする資格の具体化であって、申請における事業区域の設定、事業区域に応じた車両数及び営業所・車庫の確保等について定めており、需給基準は、法六条一項二号の「運輸需給の均衡性」を具体化する基準である事業区域ごとの輸送力増強に関する要件、適正輸送力の算定方法について定めているものである。

(三)  法八八条二項及び施行令一条三項に基づき運輸局長からさらに事業計画変更認可権限を委任された被告は、「一般乗用旅客自動車運送事業の輸送力増強に関する処理について」と題する公示(以下「増車処理基準」という。)により、法六条一項の免許基準、資格基準及び需給基準について、増車関係につきさらにその全般を具体化する審査基準を定めている。

2  関西国際空港の開港(平成六年九月四日)に伴い、同空港利用者によるタクシー需要が発生することとなるが、同空港は、資格基準において定められている事業区域(交通圏)上、泉南交通圏に属していたところ、同交通圏を事業区域とするタクシー事業者(以下「事業者」という。)及びその保有する車両数は五社一四三両に過ぎず、同空港で発生するタクシー需要に対応することができないと考えられたため、近畿運輸局においては、交通圏の統合、「ポイント免許」の付与及び「空港専用タクシー」制度の導入を内容とする同空港開港に伴うタクシーの基本的輸送対策を策定した。

右輸送対策に沿って、運輸局長は、まず、平成五年一一月一日付けをもって資格基準を改め、泉南交通圏と同交通圏に隣接する泉北交通圏とを統合した泉州交通圏を設定して事業区域を広域化し、輸送力の拡大を図ることとし、さらに、関西国際航空におけるタクシーの基本的輸送力を確保し、事業区域の広域化による効率的輸送と利用者の利便促進を図ることを目的として、平成六年四月一日付けで、運輸局長及び同自動車部長は、それぞれ、「関西国際空港開港に伴うタクシー輸送対策の具体的取扱いについて」(以下「局長通達」という。)及び「関西国際空港開港に伴う各種申請の処理について」(以下「部長通達」という。)を決定し、これを業界団体等関係者に対して文書で通知した。

局長通達及び部長通達の内容は、別紙のとおりであるが、これによる輸送対策の柱は、前記基本的輸送対策と同様、①泉州交通圏内に営業所を有する事業者に対しての事業区域の同交通圏全域への拡張、②「空港専用タクシー」制度の導入、③「ポイント免許」の付与であった。

すなわち、泉州交通圏の設定に伴い、同交通圏内に営業所を有している既免許事業者に対しては、同交通圏全域にその事業区域を拡張させるための免許申請を行わせるものとし、その認可に当たっては、資格基準及び需給基準に定められた要件を緩和することとしたものである。しかしながら、統合された泉州交通圏内の事業者は一二社四三三両にとどまり、その現状における輸送力のみでは同空港におけるタクシー需要に十分に対応することはできず、泉州交通圏内の事業社のみならず、同交通圏外の事業者による輸送力も導入する必要があると考えられたことから、同交通圏外の事業者に対しては、同空港を発地とする旅客の輸送に限って、同空港の地域においても業務を行うことを可能にするために、「ポイント免許」を付与することとし、さらに、同空港内に一定両数のタクシーが常時待機し、同空港のタクシー需要に対して確実に対応するために、同空港を発地とする旅客の輸送に専属的に対応するための「空港専用タクシー」制度を増車の方法によって導入することとした。(甲第三、第四号証、乙第二ないし第六号証、第一四号証の一ないし三、証人多賀和夫の証言)

3  運輸局長は、平成六年五月二〇日付け通達をもって、局長通達2(2)で定められた空港専用タクシーに係る増車申請の受付期間を一〇日間延長した。

4  大阪府下における空港専用タクシーに係る増車申請は、四二社からなされ、右申請に係る車両数の合計は一九六両であった。

被告は、右増車申請に対して、合計一四六両を認可することとし、泉州交通圏内及びこれに隣接する大阪市域交通圏内の堺市の事業者からの増車申請に対しては、部長通達2(3)に定める申請可能両数(以下「申請可能両数」という。)の範囲内で申請両数の一〇〇パーセントを認可し、大阪市域交通圏内のその他の事業者及び河南B交通圏内の事業者からの増車申請に対しては、一律に申請可能両数の四〇パーセントの範囲内で認可することとした(以下「本件認可基準」という。)。

5  原告らの本件増車申請に対しても、被告は、本件認可基準に従い、申請可能両数(なお、原告三菱交通株式会社を除くその余の原告らの申請両数はいずれも申請可能両数と同一であった)の四〇パーセント相当両数のみを認可し、六〇パーセント相当両数を認可しない旨の本件処分を行ったものである。

四  原告の主張

1  タクシー事業の増車申請に対する認可は、憲法上保障された営業の自由を制限するものであるから、その制度は公共の福祉の観点から必要最小限にとどめるべきものである。本件増車申請は、関西国際空港の開港に伴うタクシー事業の事業計画変更認可申請であって、既に免許が与えられている事業者に対してなされる規制であるから、特段の事情がない限りこれを認めるべきで、合理的な理由のない限りこれを制限する規制をすることは本来許されず、認可の審査に当たって、処分庁に委ねられる裁量の幅は少ないというべきであり、法の下の平等も遵守されなければならない。

2  本件処分は、以下のとおり、局長通達及び部長通達に反し、法六条、一五条、八八条に照らして違法であるのみならず、憲法上の要請である営業の自由および法の下の平等を無視して、恣意独断で行った違法なものであって、その不認可部分はいずれも取消されるべきである。

(一) 増車申請の受付期間が一〇日間延長された点について

(1) 関西国際空港の開港に伴うタクシー運輸に関しては、開港に伴う諸問題を解決するため、被告自らの指示により平成五年一二月二二日に、大阪府下のタクシー団体及び和歌山県タクシー協会により関西国際空港タクシー運営協議会(以下「運営協議会」という。)が結成され、運営協議会が本件増車申請に関しての被告との交渉・連絡についてその窓口となっていた。しかし、近畿運輸局長は、右協議会の存在を無視し、運営協議会の一構成員で任意団体にすぎない大阪タクシー協会の延長要請のみに従い、一旦局長通達によって定めた受付期間を安易に延長したものであるが、これは恣意的といわざるを得ない。

(2) さらに、そもそも、本件においては、申請締切当日に原告らが本件増車申請を行い、大阪府下の申請車両数が一八一両となり、申請車両数は局長通達2(6)に定める基本的車両数(以下「基本的車両数」という。)一七〇両程度を上回り、受付期間の延長は必要でないことが明確になったにもかかわらず、原告らの本件増車申請がなされた後に受付期間延長の通達がなされた疑いもあり、少なくとも右通達がなされた時点において、被告においては、原告らが増車申請を行うことを了知しており、当初予定した受付期間内に申請車両数が基本的車両数一七〇両程度を上回ることを十分に認識していたのであり、また、関係者の意見を聴取すればこのことは簡単に判明したものであった。したがって、運輸局長において受付期間を延長する必要はなかった。

(3) また、運輸局長においては、五月二〇日に受付を締め切った後に申請車両数が一七〇両程度に足らないことが判明すれば、その時点で運営協議会との協議を踏まえた上で受付期間の延長を検討すれば足りたのであり、当初の受付期間の満了を待たずに延長を決定する必要はなかった。

(4) そして、一度なした通達の内容を変更するのであれば、その変更の必要性について通達による公示をし、通達を受けた者全員に、聴聞及び主張立証の機会を与えるべきであり、このような手続がなされずに行われた本件処分は、公正な手続を受けるべき原告らの法的利益を侵害するものである。

したがって、運輸局長において空港専用タクシーに係る増車申請の受付期間の延長を行い、被告がこれに従ったことは、本件増車申請に関する認可権限を濫用するものとして違法であり、本件処分には重大な手続上の瑕疵がある。

(二) 基本的車両数「一七〇両程度」を変更した点について

(1) 局長通達2(6)によれば、空港専用タクシーの基本的車両数は、大阪府下においては一七〇両程度とする旨公示されている。しかるに、被告は、大阪府下における空港専用タクシーに係る増車申請に対しては合計一四六両のみを認可しているが、関西国際空港が当初予定していた乗り入れ便数が大幅に下方修正される見込みであることは、遅くとも平成六年三月ころより論じられており、同年四月一日付けで局長通達をなした時点では、乗り入れ便数の下方修正について、被告及び近畿運輸局は十分認識していたものであるから、一七〇両程度の基本的車両数を改めて変更する理由はなかった。現に同年五月二〇日付けの受付期間を延長する旨の書面には、「受付期間の延長によって事案の処理については、変更がないことを付言する」旨記載されているのであり、その後半月経たずして基本的車両数そのものを見直すことは、先に行った局長通達の内容を無視するものといわざるを得ない。

(2) また、真にかかる必要があるとしても、関係者全員の意見を求めて局長通達を変更し、その旨通達による公示をし、申請者に知らしめ、その聴聞及び主張立証の機会を与えるべきであるが、そのような措置はとられなかった。

したがって、被告において、基本的車両数を二〇両以上下回る一四六両のみを認可したことは、違法である。

(三) 本件認可基準の内容について

本件認可基準は、以下のとおり、局長通達及び部長通達に反するもので、その内容も著しく不合理なものであり、右基準に基づいてなされた本件処分は違法である。

(1) 局長通達2(4)によれば、「泉州交通圏」「和歌山市及び海南市」以外の事業区域内に営業所を有する事業者については、車両の効率的運用が可能であり、かつ、運行管理上支障がないと認められる以上、「泉州交通圏」「和歌山市及び海南市」と比して認可基準、審査基準において平等な取扱いをされなければならないのである。すなわち、局長通達及び部長通達においては、事業区域において発生する輸送需要は、当該事業区域の事業者が中心となって輸送を担うものとする考えを表す文言は何ら記載されておらず、大阪府下の泉州交通圏等四区域の事業者間あるいは大阪市域交通圏の堺市の事業者と他の事業者で何ら制限ないし区別を設けておらず、空港からの距離により差異を設けてもいない。局長通達3(1)の「空港専用タクシーによる基礎的輸送力に加え、補完的な輸送力を確保するため」「ポイント免許制」を導入するとの文言も、ポイント免許を受けたタクシー車両を空港専用タクシーによる輸送の補完的立場ととらえることを意味するにとどまり、泉州交通圏以外の交通圏に泉州交通圏の供給力を補完させる意味でポイント免許制度が導入されたという意味ではない。

また、局長通達2(4)には、「車両の効率的運用」「運行管理」という文言は記載されているが、処理基準は別途定めることとされているのであるから(同(5)参照)、これは増車についての審査基準ではない。仮に、車両の効率的運用及び運行管理に支障がないことの二条件が審査基準であるとしても、空港専用タクシーが旅客サービスや運行管理に影響を与えるおそれはなく、また、車両の効率的運用というものは、事業者の利益に関するものであり、事業者自身が考慮すれば足り、被告において勘案すべきものではなく、営業の自由を制限するような本件処分をなす合理的な理由とはならないし、運行管理についても、監督官庁である被告が個々的に厳しく指導・監督すれば足りるのであり、認可台数そのものを制限するという過度に営業の自由を制限することの合理的な理由とはならない。しかも、高速道路の発達した現代においては、単純に関西国際空港から事業所までの距離を問題にして運行管理の適否を判断することは合理的ではない。そもそも、被告が主張するように、空港専用タクシー制度が、長距離・長時間の運転を運転者へ強いるため、その負担が大きくなるのであれば、こうした運転者及び乗客の安全に直結する危険を未然に防止するためには、かかる事業者からの増車申請を全く認可しないとするしか方法は存しないはずであり、たとえ少数でも認可した場合、その両数だけ被告のいう安全に直結する危険が生ずるからであって、被告の主張は、事業者によって認可車両数に差異を設けることの合理的な理由となっていない。

また、泉州交通圏からの地続きを重視するならば、同じく泉州交通圏と地続きで隣接する河南B交通圏についても堺市と同様に取り扱うのでなければ、その処分の公平性は全うされないのであって、堺市の事業者を特別扱いするのと対比して、河南B交通圏内の事業者に対する処分は一貫性に欠ける。

したがって、泉州交通圏及び大阪市域交通圏内の堺市の事業者と大阪市域交通圏内の他の事業者とを区別なく一律に処理すべきであったのであり、事業区域により認可車両数に差異を設ける本件の認可基準は著しく不合理である。

(2) 本件認可基準は、事業者の申請可能両数を基準とするものであるが、このことは局長通達、部長通達にも定めはないし、各事業者が自らの稼働状況等を考慮して申請した具体的な申請車両数を基準に認可処分をするのが当然であって、申請可能車両数を基準にすることに合理的な理由はなく、むしろ、申請行為を無意味なものとし、法一五条の趣旨を没却するものである。被告及び近畿運輸局は、事業者の事業規模を勘案したからこそ、部長通達において申請可能車両数を総認可車両数の一〇パーセントと定めたものであるから、認可に当たり、再度申請可能車両数を基準にする必要はなく、これを基準としたことによって、かえって採算ぎりぎりの車両数を認可された事業者と、余裕があるにもかかわらず認可両数を減らされた事業者とが発生し、不公平な処分結果となったものである。

(四) 本件処分の手続について

(1) 事業区域によって認可車両数に差異を設けること及びその理由、並びに車両の効率的運用及び運行管理の点は認可基準、審査基準として原告らに周知されておらず、原告らに聴聞及び主張立証の機会も与えられなかった。部長通達には、「申請車両数が予定する専用タクシーの車両数を上回る場合にあっては、各申請者ごとの事業運営の実態等を審査し、優秀と認められる事業者を優先して車両配分等の調整を行ったうえ、修正認可することとする。」旨記載されており、認可基準、審査基準として事前に原告らが知り得たのは「事業者の事業運営の優秀性」のみであり、事業区域による差異については、その事実すら知り得なかったものであり、これがなされていれば、事業者において、車庫の所在地と空港とが遠距離にある場合、空港に近い事業者と運輸協定を結ぶことによって、その車庫を借受け、空港専用タクシーの便に供するなど、具体的対策を行い、審査基準を満たすよう努力したはずである。

(2) また、認可台数を申請車両数より減少させる比率の基礎数として申請可能車両数を採用したことについても、局長通達、部長通達にも定められておらず、何ら事前に理由を付して申請対象者に知らしめることなく、原告らに聴聞・主張の機会も与えなかった。

本件処分により、原告らは、増車申請両数の六〇パーセントもの相当両数の認可が認められないという重大な損失を被るものであるから、かかる処分は公正・適正な手続によってなされるべきことが憲法上要請されているものであり、申請対象者の聴聞及び主張立証の機会を与えずになされた本件処分は公正な手続によって認可の許否について判定を受けるべき申請者の利益を侵害するものとして違法である。

五  被告の主張

1  タクシー事業は、一般国民が利用する公共交通機関の一つとして、国民生活においてその占める役割は大きく、高度の公共性を有し、その経営は直接公共の利害に関係することから、その安全な交通サービスを確保するために、新規免許の場合と同様に、事業計画変更の場合にも、法は、変更に係る部分について認可制度にかからしめ、厳格な審査を要するものとしている。このような法規制は、営業の自由を公共の福祉の観点から制限する合理的なものである。そして、事業計画変更の場合の法の要件は、抽象的・概括的であって、法は、その具体的運用について、専門的、技術的かつ政策的知見を有する行政庁に対し、一定の裁量を予定しているものである。このような法の構造からすれば、特別の事情のない限り増車申請を認めるべきであるとの原告らの主張は理由がない。

2  本件処分は、以下のとおり、法が予定している裁量の範囲内で策定された合理的な基準を公平に適用してなされたものであり、被告に裁量権の濫用・逸脱はなく、適法である。

(一) 受付期間の延長について

(1) 局長通達2(2)において、空港専用タクシーに係る事業計画変更認可申請(増車申請)の受付期間を平成六年四月一一日から同年五月二〇日と定められたのを受けて、大阪府内におけるタクシー事業者は、逐次、被告に対し増車申請を行うこととなり、近畿運輸局及び大阪陸運支局は、増車申請状況について日々把握を行っていたが、増車申請受付期限前日の同年五月一九日時点での申請状況は、二四社一〇九両であり、大阪府下の基本的車両数の一七〇両程度にはほど遠い数値であり、同月一八日には大阪タクシー協会から増車申請の受付期間を一週間程度延長するよう要請する書面も提出された。このような状況を踏まえ、運輸局長は、当初予定した受付期間内において、増車申請に係る車両数が一七〇両程度を上回ることはほぼ困難であり、関西国際空港において発生するタクシー需要に適切に対応するためには、増車申請受付期間の延長が必要であると判断し、同月二〇日午前中、増車申請の受付期間を同月三〇日まで延長することを決定し、同日付けで原告らを含む事業者団体等関係者宛に通達した。

その後、右通達が出された五月二〇日当日に、原告ら四社四九両を含む九社七二両の増車申請がなされ、同月三〇日時点における増車申請は、四二社一九六両となったが、原告らが本件増車申請をした時点では、既に受付期間の延長の決定はなされ、各事業者団体等への通達文書の発送も済んでいた。

もちろん、被告において、五月一九日の時点で、原告ら四社四九両を含む九社七二両の申請が行われることは了知しておらず、これを予測することもできなかった。

(2) 関西国際空港において発生するタクシー需要に適切に対応するための方策をどのようにするかは、認可権者である被告の広範な裁量により決せられるものであるところ、運輸局長による受付期間延長の措置は、同空港開港時に必要な基本的車両数一七〇両程度の申請の確保のために、大多数のタクシー事業者の受付期間の延長方の要望及び受付期間終了前日の増車申請状況を勘案して行ったもので、被告の裁量の範囲内で行った合理的かつ必要な措置であり、かえって期限を延長した結果、意欲のある者に広く機会を与えることになり、行政の公平な運営に資することとなったのである。

なお、運営協議会は被告の指示により設立されたものではなく、大阪府下のタクシー事業者団体及び和歌山県タクシー協会が関西国際空港株式会社から具体的問題事項について業界の意思表示を求められるのに対応して、自主的判断に基づき設立されたものであり、運営協議会が増車申請に関して窓口になっていたものでもない。

(3) 原告ら主張の「公平な手続を受くべき法的利益」は、審査基準について局長通達及び部長通達を公表していることにより満たされているのであって、単なる受付期間の延長という通達内容の変更についてまでも、その変更の必要性について公示する必要はないし、申請者に聴聞・主張立証の機会を確保する必要もない。ましてや、右変更時には原告らは増車申請をしていなかったのであり、原告らの主張は、通達の変更がある場合には申請の有無を問わず反論等の機会を与えよというものであり、一種の立法論にすぎない。

(二) 基本的車両数の変更について

(1) 関西国際空港は、当初計画において、国内線週六三〇便、国際線週四九〇便の乗り入れを見込み、その実現を目指していたもので、運輸局は右計画に基づき、タクシー需要の予測を行い、平成六年四月の時点で必要輸送力である空港専用タクシーの基本的車両数を大阪府下については一七〇両程度と策定したものである。

しかし、その後、同年六月に入り、航空局の発表ないし航空局から入手した直近の乗り入れ予定便数により当初計画が大きく下方修正されることが確実となったことに伴い、タクシー利用旅客も、当初推定していた需要よりも減少することが予測されたため、運輸局長は、便数の減少率等を勘案検討した結果、大阪府下における空港専用タクシーの基本的車両数を一七〇両程度から一四〇両ないし一五〇両に下方修正することとし、その旨被告に指示した。

(2) 運輸局長は、増車申請について需給条項に係る審査基準を設定し、被告は、その審査を行うこととされているのであるところ、関西国際空港で発生するタクシー需要を推定する際の基礎的データである航空機乗入れ便数が大幅に減少した場合には、当初予定していた需要が減少するため、タクシー需給の均衡を保つための措置として右のような措置を講じたものであり、これは裁量の範囲内に属するものであって、何ら違法な点はない。航空当局として同空港の開港時の運行便数を確定的に把握できるようになるのは、許認可関係の手続から早くても開港三か月程度前の平成六年六月ころであり、それ以前にマスコミ各社独自の取材により報道が行われていても、行政庁としては、航空当局の発表ないし当局から入手した情報を信頼するのが当然である。

(3) また、もともとの基本的車両数「一七〇両程度」については、関西国際空港への国際線及び国内線の乗り入れ便数という変動要素を当然予定していたことから、局長通達においても「空港専用タクシー制度の導入にあたっては、基本的車両数を大阪府下においては一七〇両程度…を目処に検討することとし、空港利用旅客の状況及び各種交通機関のアクセスの状況等を勘案のうえ、申請の具体的審査の中で車両数を決定するものとする」といった文言で規定し、一七〇両程度という車両数は一つの目処とし、具体的な車両数の決定をする際の諸要素も明らかにしているのであって、基本的車両数に拘束されるものでないことを明示している。

(4) このように、基本的車両数「一七〇両程度」の変更については、同空港への乗り入れ予定航空便数の減少というやむを得ない要因により、局長通達に基づき行政の裁量の範囲内で行ったものである。そして、基本的車両数の変更自体も、そもそも局長通達が予定していたことであり、これに対する公示、聴聞の機会等の確保が必要であるとは言えず、裁量の範囲を逸脱したものとも言えない。

(三) 本件認可基準の内容について

(1) 右(二)(1)のとおり、関西国際空港における適正な供給輸送力は一四〇両ないし一五〇両であったのに対し、増車申請車両数は一九一両であり、そのすべてを認めることとすれば供給輸送力が過剰となるため、車両数を削減して認可せざるを得なかったものである。

そこで、被告は、同空港が存在する泉佐野市、泉南市及び泉南郡田尻町が含まれる泉州交通圏内の事業者からの増車申請については、申請可能両数の範囲内で一〇〇パーセント認可し、泉州交通圏に地続きで隣接する堺市の事業者についても、泉州交通圏に準じて申請可能両数の一〇〇パーセント認可することとし、残りについては、堺市を除く大阪市域交通圏内及び河南B交通圏内の事業者に対して公平に処分するため、一律に申請可能両数の四〇パーセントの範囲内で認可することとしたものである。

(2) この認可基準は、ある地域において発生する輸送需要については、当該地域を含む事業区域の事業者が中心になって輸送を担うものとする考え方に立ち、また、車両の効率的運用及びタクシー事業において最も重要である安全な運行の前提となる運行管理面を考慮して、関西国際空港からの距離に着目し、交通圏(事業区域)により基本的車両数の配分において差異を設けることとしたものであるが、これは、以下のとおり、法令の趣旨及び局長通達、部長通達等に沿い、また可能な限り事業者間の公平性を重視したものであり、運輸行政上の専門技術的知識を有する被告の行政裁量権の範囲内にあって合理性を有するものである。そして、被告は、本件増車申請を含む空港専用タクシーに係る一連の増車認可申請について、右基準を公平に適用して審査したものである。

(3) 法は、タクシー事業者が応ずることのできる輸送需要の範囲をその発生地で把握するために設定する区域として事業区域の概念を用いて規制をしているものであり、事業者は、事業免許を取得した以上、その定められた事業区域内の輸送需要に対し輸送を担うという使命を負うものであるから、ある地域における新規需要が発生した場合においては、当該地域を事業区域とする既存の事業者がその需要に応えて供給を増加することを求められ、法もその需給関係の均衡が保たれる限り、増車を認可していくことを予定しているものである。本件での関西国際空港の開港も、このようなある事業区域内の新規需要ということができ、同空港の所在する泉佐野市、泉南市、泉南郡田尻町の市町が含まれる泉州交通圏内の事業者が中心となって担うことが求められている。

このような概念は局長通達にも活かされているところであり、局長通達2(4)③において、泉州交通圏内の事業者に対しては、同交通圏が同空港のタクシー需要に対応する本来の事業区域であることから、特段の事情がない限り、「車両の効率的運用」及び「運行管理上支障がない」との条件を充足すると考えられたため右条件が記載されていないのであり、さらに、同通達3(1)では、「空港専用タクシーによる基礎的輸送力に加え、補完的な輸送力を確保するため」ポイント免許制を導入し、同(2)でポイント免許付与対象事業者の条件として、大阪府下では大阪市域交通圏、河南交通圏、河南B交通圏の事業区域に営業所を有することとして、泉州交通圏と大阪府下のその余の交通圏とを区別し、後者について泉州交通圏の供給力を補完するという意味でポイント免許制度を新たに導入することにしたものである。

なお、運輸局長は、従来の泉北交通圏と泉南交通圏とを統合して泉州交通圏を設定して、同交通圏を同空港の地元地域として同空港で発生する需要に対応させようとしているが、これも、当該事業区域において発生する輸送需要は、当該事業区域の事業者が中心となって輸送を担うという観点から行ったものである。

(4) 法令においては、安全の確保の手段として、運行管理を重視しているが、行政庁においては、個々の事業者の営業所の運行管理を日常的に細部にわたって監督することは現実的には不可能であり、そもそも運行管理については、一定規模の事業内容を有するタクシー事業者の保有車両数、運転者数、車両の運用方法等によりその内容が左右される性格のものであるから、法を現実的に、かつ、責任をもって運用する立場にある被告が増車申請等を審査するに当たっては、運行管理面も重要な指標になるのであり、被告が認可車両数をもってこの面からの監督を果たそうとすることには十分な合理性がある。

また、タクシー事業は、公共輸送機関の一つとして国民生活においてその占める役割が大きく、高度の公益制を有し、その経営は直接公共の福祉に関係するものであり、車両の効率的運用は、法一五条二項において準用する法六条一項三号における「当該事業の遂行上適切な計画を有するものであること」という認可基準の具体的内容の一つとして位置付けられるものであるから、被告において公共性の観点から車両の効率的な運用を勘案することは十分な合理性を有する。

そして、局長通達も「泉州交通圏、和歌山市及び海南市以外の事業区域内に営業所を有する事業者については、車両の効率的運用が可能であり、かつ、運行管理上支障ないと認められる場合に限」って増車の対象とするという基準を設定している(局長通達2(4)③)。これは、法の規定上右両条件を満たして初めて増車申請が認可されることを前提とした上で、泉州交通圏内並びに和歌山市及び海南市の事業区域内に営業所を有する事業者については、関西国際空港からの距離関係から、特段の事情がない限り、「車両の効率的運用」「運行管理上支障ない」の両条件を充足すると考えられるため、これをあえて明記するまでもなく、それ以外の地域の事業者についてのみ念のために明示したにすぎないものであり、基本的車両数の配分に当たり、平等な取扱いを保障したものではなく、あくまで空港専用タクシー制度の原則的な基準を基に具体的な審査の運用を念のために明示したものに過ぎない。

(5) 本件においては、泉州交通圏外の事業者にとつて空港専用タクシーは、事業区域を超えて営業所から遠距離の関西国際空港まで出向いて営業し、かつ、自己の営業所に入庫するという特殊な形態となり、長距離・長時間の運行により運転者への負担が大きくなると考えられることから、運転者及び乗客の安全に直結する危険を未然に防止するために、事業者の有する車両数や運転者の数に占める空港専用タクシーの割合を検討する上で運行管理の過度の負担をさせない配慮をすることも、運輸行政上の専門技術的知識を有する被告の行政の裁量の範囲内にあるものということができる。

また、関西国際空港と営業所との距離が短ければ短いほど、運送収入や経費といった側面においても、タクシー需要に対する対応という側面からも、さらには運転者への負担といった側面からも、それだけ車両の効率的運用につながるということができる。

したがって、運行管理及び車両の効率的運用の面から考慮する際に、関西国際空港から営業所までの距離を指標にすることには合理性がある。

(6) 大阪市域交通圏の堺市の事業者について泉州交通圏の事業者と同一に取り扱ったのは、泉州交通圏の事業者の増車申請状況は、九社五七両という数値で、下方修正された基本的車両数一四〇両ないし一五〇両の半数に達しない状況にあり、泉州交通圏の北に地続きで位置する堺市の事業者については、空港専用タクシーに関する限り距離的に車両の効率的な運用が可能であり、また運行管理面からも問題が少ないと考えられたためであって、行政の裁量の範囲内にあることは明らかであり、不合理であるとは到底いえない。なお、泉州交通圏と地続きで位置しているのは大阪府内では堺市のほか河内長野市があるが、河内長野市に営業所を有する事業者からの申請はなかった。

(7) 空港専用タクシー導入事業者においては、関西国際空港株式会社に対し支払うべき施設利用等関係経費の負担があること等から、事業者の事業規模を勘案せざるを得ず、このため、対象事業者に公平に適用すべく、被告は、本件認可基準において、事業者の事業規模を反映する申請可能両数を基準としたものであり、このことは不合理なものではない。申請車両数を基準にするか、申請可能車両数を基準にするかは、被告の裁量の範囲に属する問題であり、合理的な判断の上で処分している以上、これが裁量の範囲を逸脱したものとして違法であるとはいえない。

(四) 本件処分の手続について

法は、タクシー事業者の増車を認可にかからしめ、その具体的審査基準の策定及び運用を行政庁に委ねており、本件においては局長通達及び部長通達は既に公示されており、このうち、局長通達では、関西国際空港の利用旅客に対する基本的車両数としては、大阪府下において一七〇両程度の供給量を目処に検討することとし、同空港の旅客状況及び各種交通機関のアクセス状況等を勘案の上、具体的審査の中で車両数を決定する旨(局長通達2(6))及び泉州交通圏並びに和歌山市及び海南市以外の事業区域内に営業所を有する事業者は、車両の効率的運用が可能であり、かつ、運行管理上支障ないと認められる場合に限って増車を認可する旨(同2(4)③)示されており、また、部長通達では、申請車両数が予定する基本的車両数を上回る場合にあっては、車両配分等の調整を行った上、修正認可する旨(部長通達2(6))示されているところである。したがって、「車両の効率的運用」及び「運行管理上支障ない」ことが審査基準の一つであることは局長通達において定めて公示されているものである。そして、これ以上の事柄については、すべての申請が出そろった段階で事業者からの申請傾向、泉州交通圏内の事業者とそれ以外の事業者との申請割合、営業所・車庫からの距離等を総合的に判断することになる事柄であるから、申請期限までに具体化して周知できるものではない。

そもそも、行政庁には、行政処分の審査基準を事前に公表はしても、個々の申請に対する具体的な処分内容まで事前に予告して公表する法的義務もない。

したがって、本件処分の手続に違法はない。

六  争点

1  本件処分が以下の点に関連して違法であるかどうか。

(一) 運輸局長が増車申請の受付期間を延長したこと

(二) 運輸局長が空港専用タクシーの基本的車両数「一七〇両程度」を変更したこと

2  本件処分の基礎となった本件認可基準が通達等に反し、不合理なものであるかどうか

3  本件処分の手続に聴聞等の機会を与えなかった違法があるかどうか

第三  当裁判所の判断

一  タクシー事業の事業計画変更申請に対する認可処分の法的性質

1 法は、タクシー事業の経営について免許制を採用し(四条)、行政庁は右免許に当たっては法六条一項各号に定める免許基準を充足しているか否かを審査しなければならないこととし、国民の営業の自由に対する制約を加えているが、このような法規制は、タクシー事業が一般国民の利用する公共交通機関の一つとして高度の公共性を有し、その事業の適正な運営が公共の福祉に密接な関わりを有することによるものである。

そして、法は、既に免許を受けている事業者が増車等の事業計画を変更する場合も、軽微な事項に係る変更を除き行政庁の認可にかからしめ(一五条一項)、この場合にも法六条一項各号の基準が準用される旨規定しているのであるが(一五条二項)、これは、前記のような法の趣旨を考えると、事業計画変更の場合にあつても、程度の差こそあれ、これが公共の利害に関わるという点では新規免許の場合と基本的には変わるところはないためである。

したがって、関西国際空港開港に伴うタクシー事業の事業計画変更の認可申請である本件増車申請に対しても、法六条の基準を充足するか否かについて実質的な審査がなされるべきであり、特段の事情がない限り右申請は認可されるべきであるとする原告らの主張は理由がない。

2  ところで、法六条一項各号に示された基準はきわめて概括的、抽象的であることからすれば、その具体的な運用は免許・認可事務の実施に当たる行政庁の専門技術的あるいは運輸行政的見地からの合理的な裁量に委ねているものとする趣旨であり、それとともに、右のとおり免許・認可制度が営業の自由を制約する側面を有することにもかんがみると、その適切かつ公平な運用を図るためには、行政庁は、法によって委ねられた右裁量権の範囲内において具体的な審査基準を設定してこれに沿った運用を行うことが法の要請するところであると解すべきである。そして、この場合、審査基準自体が法の趣旨に沿った合理的な内容であることを要するとともに、行政庁はこの審査基準を合理的かつ公正に適用しなければならず、行政庁が不合理な内容の審査基準を適用し、あるいは審査基準自体は合理的なものであっても、その適用が不合理あるいは不公正であるときは、法の委ねた裁量の範囲を逸脱するものとして、その処分は違法の瑕疵を帯びるものというべきである。

このことを前提として、以下において本件処分が違法であるか否かを検討する。

二  増車申請の受付期間の延長について

1  甲第七号証の一、二、乙第五ないし第八号証、第一六、第一七号証、証人村上博一、同多賀和夫の各証言、原告三菱興業株式会社代表者尋問の結果並びに弁論の全趣旨を総合すれば、以下の事実が認められる。

(一) 局長通達2(2)において、空港専用タクシーに係る増車申請の受付期間は平成六年四月一一日から同年五月二〇日と定められたが、大阪府内における事業者の右増車申請の状況は、同年四月一五日に初めて一社一両の申請がなされ、五月一三日時点で九社五六両、同月一七日時点で一三社七五両、同月一八日時点で一九社九三両と低調に推移し、増車申請受付期限前日の同月一九日時点でも二四社一〇九両にとどまり、局長通達2(6)に示された大阪府下の基本的車両数の一七〇両程度にはほど遠い状況にあった。そして、同月一八日には大阪府内の全タクシー車両(個人タクシーを除く)の八割以上を保有するタクシー事業者により構成される事業者団体である大阪タクシー協会から運輸局長に対して、同月二〇日の受付期限までに期待される申請件数に達することが困難な状況になったため所要の輸送力確保に向けて会員各社の申請促進を図りたいとして、増車申請の受付期間を一週間程度延長されたい旨要請する書面も提出された。このような状況を踏まえ、運輸局長は、当初予定した受付期間内において、増車申請に係る車両数が一七〇両程度には到底達しないと判断し、関西国際空港において発生するタクシー需要に適切に対応するためには、増車申請受付期間の延長が必要であると考え、同月二〇日午前中、増車申請の受付期間を同月三〇日まで延長することを決定し、通達を発した。

(二) その後、同月二〇日午後四時四〇分ころ、原告らの本件増車申請(合計四九両)及び原告らと同一の企業グループに属し、堺市に営業所を有する新三菱交通株式会社(以下「新三菱交通」という。)からの増車申請(一一両)が一括してなされたこともあって、同日時点における増車申請は三三社一八一両となり、さらに延長された受付期限である同月三〇日には四二社一九六両に達した。

(三) なお、受付期間を延長する旨の通達内容は、近畿運輸局から五月二〇日付けで事業者団体等関係者宛に文書が発送されたが、それとともに電話やファクシミリでも事実上右通達内容が通知されており、原告らが構成する事業者団体である大阪ハイヤータクシー協会長宛には同日午後五時二八分ころファミシミリ送信され、原告らもそのころ右延長の事実を知った。

2(一)  以上によれば、当初の受付期限である平成六年五月二〇日時点において、空港専用タクシーに係る増車申請は、現実になされた認可両数一四六両はもとより、局長通達2(6)に示された基本的車両数の一七〇両程度を上回っていたのであるから、結果的には受付期間を延長しないでも関西国際空港開港に伴い発生するタクシー需要に対応するに足る両数の空港専用タクシーを認可することも可能であったということができる。しかしながら、運輸局長において受付期間延長の決定をなした五月二〇日の午前の時点では、いまだ原告らの本件申請はなされていなかったし(右決定の通知が本件申請より遅れたに過ぎない)、近畿運輸局及び同大阪陸運支局において、同日中に原告ら企業グループから本件増車申請等がなされることを知っていたことは証拠上認められず、このことを予測できる状況にあったとも認められない。

なお、甲第一三号証によれば、平成六年三月二八日付けで、新三菱交通から、「関西国際空港の開港時の利用旅客の運送に確実に対応するため」として車庫を立体化し、収容能力を一二八両から一六九両に増加させる旨の事業計画変更認可申請及び事業施設変更届がなされたことが認められるところ、これについて原告三菱興業株式会社代表者は、原告ら企業グループ五社が運輸協定を結び、右五社の空港専用タクシーを堺市に所在する新三菱交通の車庫に収容する目的であったと供述するが、右運輸協定についての認可申請はなされていないのであり、新三菱交通の右事業計画変更認可申請等の書面の記載からも右目的は何らうかがわれないのであって、行政庁においてこのことを確認すべき義務もないから、このことをもって、行政庁において本件申請がなされることを予測すべきであったとすることもできない。

(二)  原告は、運輸局長においては受付期間を延長する必要はなく、また、平成六年五月二〇日に一旦受付を締め切った後、申請車両数が一七〇両程度に足らないことが判明すれば、その時点で受付期間の延長を検討すれば足りたのであって、受付期間の締切りを待たずに延長を決定する必要はなかったと主張する。

確かに、前記認定の経緯からすれば、受付期間の延長がなされなければ、右五月二〇日時点における認可申請車両数は、五月三〇日時点のそれより一五両少なかったのであるから、原告らは本件処分より多くの車両数につき増車認可を受けることができた可能性もあったと考えられないではないが、受付期間を延長するか否か、延長の具体的内容及び方法をどのように定めるかについては行政庁の広汎な裁量に委ねられるべき事柄というべきであり、行政庁において特定の事業者の認可を妨げる等不当な意図をもって延長をしたといったような特別の事情がない限り、違法とはいえないと考えられる。そして、本件において、そのような特別の事情はうかがわれないし、前記認定のとおり、運輸局長は、増車申請状況の推移を踏まえ、大阪府内の事業者の大多数を構成員とする大阪タクシー協会からの受付期間の延長の要請がなされたことも勘案して、五月二〇日までには基本的車両数一七〇両程度に達しないとの判断に立って受付期間の延長を行ったものであり、その時点で原告らが本件申請をすることも予測できなかったというのであるから、右の判断は合理的なものであったということができる。

(三)  原告は、運輸局長が、運営協議会と協議することなく、また関係者の聴聞及び主張立証の機会を与えることなく、大阪タクシー協会の要請に則り受付期間を変更した点を問題視する。しかし、運輸局長が受付期間の延長を決定するに当たり、大阪タクシー協会から要請があったことも勘案したものの、そのことのみによって延長を決定したものではないことは前記認定の事実から明らかである。また、証人多賀和夫の証言及び原告三菱興業代表者尋問の結果によれば、運営協議会は平成五年一二月に関西国際空港の輸送対策を協議するために大阪府下のタクシー事業者団体及び和歌山県タクシー協会が任意に組織したものであり、被告が設立を指示したものではないことが認められる。確かに、乙第一五号証及び証人多賀和夫の証言によれば、近畿運輸局が関西国際空港のタクシー輸送対策について運営協議会から意見や要望を求めたり、同協議会に局長通達及び部長通達の案の説明をしたことは認められるが、受付期間を延長をどのような方法で行うかについては行政庁の広汎な裁量に委ねられる事柄であることは前認定のとおりであり、また、運輸協議会の性格に照らしても、右のような事実があったからといって、決定に当たり運営協議会と協議すべき義務があるとまではいえないし、運輸局長はこれを原告ら関係者に通知している以上、さらにその理由を公示したり、関係者に意見を述べる機会を与えたりする必要もないというべきである。

3  以上によれば、運輸局長が受付期間を一〇日間延長した措置は行政庁の裁量の範囲に属するものであり、その内容及び手続に違法はない。

三  基本的車両数の変更について

1  乙第五号証、第九ないし第一二号証、証人多賀和夫の証言によれば、以下の事実が認められる。

(一) 関西国際空港を運営する関西国際空港株式会社は、当初、国内線週六三〇便、国際線週四九〇便の乗り入れを計画し、その実現を目指していたもので、近畿運輸局も右計画に基づき、タクシー需要の予測を行い、平成六年四月の時点で右需要に対応する空港専用タクシーの基本的車両数を大阪府下については一七〇両程度、和歌山県下においては一〇両程度と見込んで局長通達2(6)においてその旨公示した。

(二) 空港専用タクシーに係る増車認可は、事業者の車両及び運転者の確保等の準備期間を見込み、関西国際空港の開港二か月前にはする必要があったところ、平成六年六月に入り、開港時の乗り入れ予定便数について、国内線はほぼ当初計画に達していたものの、国際線については週三五〇便程度と当初計画を大幅に下回ることが運輸省航空局から入手した情報から確実となり、これに伴い、同空港におけるタクシー需要も当初推定よりも減少することが予測されたため、運輸局長は、便数の減少率等を検討した結果、空港専用タクシーの基本的車両数を一七〇両程度から一四〇ないし一五〇両に変更することとし、その旨被告に指示し、被告はこれに従い、増車申請に対して合計一四六両を認可した。

2(一)  原告らは、局長通達が発せられた平成六年四月の時点において関西国際空港の乗り入れ便数が大幅に下方修正されることは行政庁において認識しており、基本的車両数を更に減少させる必要はなかったと主張する。

確かに、甲第五、第六号証によれば、既に平成六年三月の時点において同空港への国際線の乗り入れ便数が週三六〇便程度にとどまる見通しである旨の新聞報道がなされていたことが認められるが、右各証拠によると、これは大手旅行会社が航空各社から聞き取り調査した結果にすぎず、当時関西国際空港株式会社は、航空各社でなお調整中であり、具体的な状況を見極める段階ではないとの認識を有しており、当初計画を維持しつつ、便数の確保については引き続き努力をしていきたいとの姿勢であったことが認められるのであって、局長通達を発した同年四月時点においては、同空港開港時の航空機の乗り入れ便数について、いまだ確実に予測できない状況にあったというべきである。そして、前記認定のとおり、被告は、その後に航空局から得た情報により、大幅に乗り入れ予定便数が減少することが確実となったことから、基本的車両数を下方修正し、一四六両を認可したものである。

法は、一五条二項で準用する法六条一項において、供給輸送力と輸送需要量が不均衡とならないものであることを事業計画変更の認可基準の一つとしているところ、局長通達2(2)では、空港専用タクシーは、需給基準3(1)①に定める当該地域における需給の基盤的変化に対応し輸送力を増強する目的の増車と位置付けており、さらに、同通達2(6)では、空港専用タクシーは、基本的車両数を大阪府下においては一七〇両程度を目処に検討するとしつつ、空港利用旅客の状況及び各種交通機関のアクセス状況等を勘案の上、申請の具体的審査の中で車両数を決定するものとすることとしており、同空港におけるタクシー需要予測の変動に応じて認可車両数も変動することが右通達自体において明示されていたのであって、一七〇両の当初予定に対し一四六両が認可され、その差は二四両にすぎないことを考えると、右程度の減少は同通達によって予定された範囲内のものというべきである。

以上によれば、運輸局長が基本的車両数を一七〇両程度から一四〇ないし一五〇両程度に変更し、被告がこれに則り一四六両のみを認可したことは法及び需給基準並びに局長通達の趣旨に沿った措置ということができ、裁量権を逸脱した不合理なものとは到底認められない。

なお、甲第七号証の二、乙第八号証によれば、運輸局長が平成六年五月二〇日付けでなした受付期間の延長の通達には、「受付期間の延長によって事案の処理については、変更がないことを付言する」との記載のあることが認められるが、前記認定の経緯からすれば、右通達がなされた時点においても関西国際空港株式会社や航空当局から乗り入れ便数についての当初計画を下方修正する旨の正式発があったことは証拠上認められず、なお同空港の航空機の乗り入れ便数を確実に予測することはできなかったと考えられるし、そもそも右のとおり局長通達においても実際の認可両数が基本的車両数の一七〇両程度に拘束されるものではないことが明示されているのであるから、右記載も原告らの主張の根拠となるものではない。

(二)  そして、右のとおり、二四両程度の変更は局長通達が当然予定するものであるから、局長通達を変更する必要はないし、右変更を関係者に知らしめ、主張立証の機会を与えるべきであるともいえない。

3  以上によれば、運輸局長が基本的車両数を一七〇両程度から一四〇ないし一五〇両に変更し、被告がこれに従い一四六両を認可したことに違法はない。

四  本件認可基準の内容について

1  乙第一四号証の二、証人多賀和夫の証言及び弁論の全趣旨によれば、以下の事実が認められる。

(一) 空港専用タクシーについては、受付期間の五月三〇日までに、大阪府下に営業所を有する事業者四二社から合計一九六両の増車申請がなされ、下方修正された認可すべき基本的車両数一四〇ないし一五〇両を上回ったため、被告は本件認可基準に従い事業者ごとの認可車両数を配分した。すなわち、関西国際空港が所在する泉南交通圏内に営業所を有する事業者の増車申請をすべて認可したとしても右基本的車両数に遠く及ばないことから、被告は、泉州交通圏内及び大阪市域交通圏内のうち堺市の事業者の増車申請については、申請可能両数を限度としてすべて認可することにした。これによる認可両数は九五両である。そして、被告は、大阪府下の事業者の認可両数の合計が一四〇ないし一五〇両となるように、堺市以外の大阪市域交通圏内及び河南B交通圏内の事業者からの増車申請(本件増車申請を含む)に対しては、一律に申請可能両数の四〇パーセントの範囲内で認可することとし、その結果、認可車両数は一四六両となったのである。

(二) このように、本件認可基準において、被告が泉州交通圏内及び大阪市域交通圏内の堺市の事業者と他の事業者とで取扱いに差異を設けたのは、関西国際空港のタクシー需要は同空港が所在する泉州交通圏の事業者が第一次的に対応すべきものであり、また、堺市については泉州交通圏の北に地続きで接しており、関西国際空港からの距離が泉州交通圏に次いで近いことを勘案したのである。

2  そこで、右の認可基準が合理的なものであるかどうかを検討する。

(一) 法は、タクシー事業については、事業区域を定め(五条一項二号)、発地及び着地のいずれもがその事業区域外に存する旅客の運送を禁止し(二〇条)、当該事業の開始が輸送需要に対し適切なものであること及び当該事業区域に係る供給輸送力と輸送需要量が不均衡とならないことを免許又は事業計画変更(以下「免許等」という。)の基準として掲げ(六条一項一号、二号)、事業者には事業計画に従い業務を行うことを義務付け(八条、一六条)、事業の全部又は一部を休廃止する場合も行政庁の許可を要することとし、右休廃止により公衆の利便が著しく阻害されるおそれがあると認められるときは許可が得られない(三八条)ことを定めているが、これからすれば、法は、タクシー事業者に対し、その事業区域で生じるタクシー需要に対応して安定した輸送力を供給すべき公益的な任務を負わせているものというべきである。

(二) また、法は、免許等の基準として、当該事業の遂行上適切な計画を有すること及び当該事業を自ら適確に遂行するに足る能力を有することをも定めているところ(六条一項三号、四号)、これは法の目的とする適正な運送事業の運営を実現するためであるということができる。そして、右の法の免許等の基準を具体化するために資格要件及び増車処理基準が定められているのであるが、特に増車処理基準においては、通常の増車申請に対する審査基準として、事業計画が事業の健全な発達と適正な輸送の安定的供給に資するものであること、運転者の労働条件改善が確実に実施されていること、運行管理及び整備管理が適切に行われていること、過去六か月間において事業者の責に帰せられる交通死亡事故を発生していないこと等を掲げている(乙第四号証)。

(三) ところで、空港専用タクシーについては、増車処理基準は適用しないこととされており(部長通達2(2))、これについては、特に、局長通達2(4)において、空港専用タクシーに係る増車申請は、大阪府下においては、泉州交通圏、大阪市域交通圏、河南交通圏、河南B交通圏のいずれかの事業区域内に営業所を有する事業者、和歌山県においては和歌山市及び海南市の事業区域内に営業所を有する事業者をその対象としつつ、「泉州交通圏」「和歌山市及び海南市」以外の事業区域内に営業所を有する事業者については、車両の効率的運用が可能であり、かつ、運行管理上支障ないと認められる場合に限るものと定められている。これは、前記(一)の法の趣旨に沿って、同空港で発生するタクシー需要は、第一次的には同空港の属する事業区域もしくはこれに隣接する事業区域の事業者の供給輸送力によって対応させ、なおこれを補完する役割を大阪市域交通圏、河南交通圏、河南B交通圏の事業者に与えることとする趣旨であるとともに、空港専用タクシーにあっては、その営業所から関西国際空港に出向いて、同空港を中心に業務を行い、営業所に戻るという特殊な運行形態となるところ、「泉州交通圏」「和歌山市及び海南市」以外の事業区域内に営業所を有する事業者にとっては、「泉州交通圏」「和歌山市及び海南市」の事業者に比較して、営業所が空港専用タクシーの営業の本拠となる同空港から遠隔地にあり、その往復に長時間を要し、長距離・長時間の運行となること及びこのことに伴う運行の安全、乗務員の労働条件、旅客サービス、営業収支等に及ぼす影響等を考慮する必要があるため、特に車両の効率的運用及び運行管理面からの審査を要すると考えられたことによるものである。したがって、車両の効率的運用及び運行管理上の支障の有無は、ある事業者が空港専用タクシーを保有するか否かだけでなく、当該事業者の保有する空港専用タクシーの両数ないし全車両数に対する空港専用タクシーの割合如何にも関わりを有するものであり、また、この運行管理及び車両の効率的運用は、適正な運送事業の具体的な内容である安全運行や運送事業の健全経営に関するものであり、これを審査の対象にすることは法の趣旨に合致するものということができる。

以上に加えて、部長通達2(6)では、申請車両数が予定する空港専用タクシーの車両数を上回る場合にあっては、各申請者ごとの事業運営の実態等を審査し、優秀と認められる事業者を優先して車両配分等の調整を行った上、修正認可することとされているのであるから、局長通達及び部長通達が相まって、事業運営の実態の内容をなす車両の効率的運用及び運行管理は、空港専用タクシーの審査基準として示されているものということができる。

(四) 以上によれば、空港専用タクシーに係る認可予定車両数一四〇ないし一五〇両の配分に当たって、各事業者の申請状況を踏まえ、関西国際空港から営業所までの距離を勘案し、同空港が所在する泉州交通圏及び同交通圏に地続きで隣接している堺市の事業者とを同一に扱い、それ以外の事業者との間に取扱いに差異を設けたことは法の趣旨に沿った合理的かつ公平な基準ということができ、局長通達及び部長通達にも何ら反するものではない。

(五) 原告らは、局長通達及び部長通達の趣旨は、「泉州交通圏」「和歌山市及び海南市」以外の事業者は、車両の効率的運用が可能であり、運行管理上支障がない以上、「泉州交通圏」「和歌山市及び海南市」の事業者と比して認可基準、審査基準において平等な取扱いをされなければならないものであり、車両の効率的運用及び運行管理の点は審査基準とされていないし、空港からの距離や事業区域間あるいは同一事業区域の事業者間に何ら差異を設けていない、また、仮に車両の効率的運用及び運行管理の点が審査基準であるとしても、車両の効率的運用及び運行管理自体増車申請の認可において考慮することは合理的でないと主張する。

しかし、少なくとも局長通達の文言上「泉州交通圏」「和歌山市及び海南市」の事業者とそれ以外の事業者とは明確に区別されていて、このような区別を設けた趣旨は前記のとおりであり、車両の効率的運用及び運行管理上支障がないことが局長通達及び部長通達によって示された審査基準と解されること、右の二要件を問題にすることが法の趣旨にも合致することも右に述べたとおりであるから、両通達が原告らの主張するような意味で平等な取扱いをしなければならない趣旨を定めているとは解されない。

(六) また、原告らは、高速道路の存在を考えれば、単純に空港からの距離を問題にすることは合理的ではないと主張する。確かに、高速道路の利用が運行時間の短縮に繋がることは否定できないが、営業所の位置関係その他の事情から常に高速道路が利用できるとは限らないのであり、例えば、営業所への車両を回送する場合、直前の旅客の着地によっては高速道路を容易に利用できず、かつ、長距離・長時間の運行を余儀なくされることも往々にして生じると考えられるし、また、高速道路を利用する場合にあっても、交通渋滞や経費の負担等を考えると、車両の効率的運用及び運行管理につき営業所が近距離に所在する場合と同一視することはできないのであって、空港からの距離を指標に車両の効率的運用及び運行管理上の支障の有無を考えることは不合理とはいえない。

原告らは、空港からの距離を問題にするのであれば、堺市と同じく泉州交通圏に地続きで接している河南B交通圏内の事業者も堺市の事業者と同一扱いしなければ一貫性を欠くと主張するが、乙第一四号証の二及び弁論の全趣旨によれば、河南B交通圏に属する市町村のうち、泉州交通圏と唯一地続きで接している河内長野市に営業所を有する事業者からの申請はなかったことが認められるから、原告らの指摘は当を得ない。

(七) また、原告らは、本件認可基準については、現実の申請両数ではなく、申請可能両数を基準にした点も不合理であると主張する。

申請可能両数は、大阪市域交通圏の事業者の場合、二〇両を限度として、当該事業者の保有する総認可車両数の一〇パーセントとする(部長通達2(3))のであるから、申請可能両数を基準とすることは、基本的には、総認可車両数に対する空港専用タクシーの割合を申請事業者間で同一とすることであり、これは公平に申請事業者に車両配分を行う一つの方法として相当なものということができるし、前記のとおり、運行管理及び車両の効率的運用は、ある事業者の保有する全車両に対する空港専用タクシーの割合如何にも関わることであり、殊に、空港専用タクシーにあっては、事業者が関西国際空港株式会社に支払うべき施設使用料等の諸経費の負担があることからも、事業者の事業規模を反映する申請可能両数を基準とすることにはそれなりの合理性があるし、このような基準を採用したからといって申請行為を無意味にするとか、法の趣旨を没却するということはできない。

(八) 以上によれば、被告が本件認可基準に基づき本件処分を行ったことが、裁量権を逸脱した違法なものとは到底認められない。

五  本件処分の手続について

1(一)  一般に、行政手続の処分の相手方に事前に告知、弁解、防御の機会を与えるかどうかは、特別の規定がある場合を除き、当該処分により制限を受ける権利利益の内容、性質、制限の程度、行政処分により達成しようとする公益の内容、程度、緊急性等を総合較量して決定されるべきものであって、常に必ずそのような機会を与えることを必要とするものではない(最高裁平成四年七月一日判決民集四六巻五号四三七ページ参照)。

(二) 法(平成五年法律第八九号による改正前のもの)においては、新規免許又は許可、事業の停止、免許若しくは許可の取消し、基本的な運賃及び料金に関する認可手続について、利害関係人の申請があった場合等に限り、聴聞を行い、主張立証の機会を与えなければならない旨明文の規定(八九条)があるが、増車等の事業計画変更の認可手続に関して特段の規定はない。

しかし、法一五条で準用する法六条一項に定める認可要件が概括的、抽象的であることや事業計画変更にあっても認可の許否が営業の自由に関わることから、前記のとおり法の趣旨を具体化した審査基準を設定してこれを公正かつ合理的に運用することが法の要請であると解されるが、それ以上に、聴聞の実施等申請人に対する主張立証の機会を与えるべきか否かについては、行政庁の判断の基礎及び過程の客観性と公正を保障すべき観点から、右(一)に挙げたところに従って、その要否を検討すべきものである。

2  本件においては、本件認可基準自体は原告ら関係者に示されていないものの、前記認定のとおり、局長通達及び部長通達において、「泉州交通圏」「和歌山市及び海南市」以外の事業区域内に営業所を有する事業者については、車両の効率的運用及び運行管理上支障がないと認められる場合に限って認可するものであること、申請車両数が認可予定の基本的車両数を上回った場合、各事業者ごとの事業運営の実態等を審査し、優秀と認められる事業者を優先して車両配分等の調整を行った上で修正認可するものであることは予め公表されていて、これにより車両の効率的運用及び運行管理上支障がないという基本的事項は審査基準として示されているのであるから、原告らにおいても事業区域によって認可の有無あるいは認可両数に差異が生ずることもあり得ることを知り得る状況にあった。特に、乙第一五号証、証人多賀和夫の証言及び原告三菱興業株式会社代表者尋問の結果によれば、平成六年三月二三日に近畿運輸局が行った局長通達案及び部長通達案についての説明会の際に、原告らの側から、大阪市域交通圏に属する門真市に営業所を有する事業者は運行管理上支障があるので、空港専用タクシーの増車と同時に運輸協定の認可申請をしてもよいかとの質疑があり、これに対して同運輸局側から審査して処理することになる旨の回答がなされたことが認められるが、これによれば、営業所が関西国際空港から遠隔地にある場合には、運行管理上の支障の有無が問題となることは原告らにおいて知っていたものと認められる。そして、これ以上の具体的な車両配分基準は、いかなる事業者からいかなる内容の増車申請がなされたかを総合的に考慮しなければ決定することのできないものであって、少なくとも増車申請がすべて出そろうまではこれを策定することは不可能といわざるを得ないし、また、本件認可基準の適用については、申請に係る事業者の事業区域及び各事業者ごとの申請可能両数及び申請両数により機械的に各事業者の認可両数が定まるもので、そこに行政庁の恣意の入り込む余地はなく、さらに、本件処分は、新規免許や免許取消に比べ営業の自由に対する制約等申請者が受ける不利益の程度は格段に小さいものというべきである。

3  以上の事情によれば、営業所からの距離によって認可両数に差異を設け、申請可能両数を基準に認可両数を決定するという本件認可基準について、被告がこれを明示的に告知せず、聴聞や主張立証の機会も与えなかったことをもって、違法ということはできない。

六  結論

以上の次第であるから、本件処分はいずれも適法であって、原告らの請求はいずれも理由がない。

(裁判長裁判官福富昌昭 裁判官加藤正男 裁判官西川篤志)

別紙目録一の一

1、事業者の住所・名称・氏名

大阪市北区中津五丁目一二番二六号

新三菱タクシー株式会社

代表取締役 升田毅

2、事業の種類

一般乗用旅客自動車運送事業

3、変更しようとする事項

1、事業用自動車の総数

一一〇両を一二一両に変更する

(空港専用タクシーの増車)

2、営業所別配置車両数の変更

事業計画新旧対照表(編注・1)のとおり

4、申請理由

関西国際空港が平成六年九月に開港することに伴い、そこに発生する旅客の輸送を重点的に行うため空港専用タクシーを導入して旅客の利便に応えるものです。

尚、本事業計画(空港専用タクシーの増車)変更について、別途免許申請が必要なため、別途申請中であります。

別紙目録一の二

平成六年五月二〇日付けをもって申請のあった一般乗用旅客自動車運送事業の事業計画変更(事業用自動車の総数及び営業所別配置車両数)は、次の条件を附して認可する。

1、事業用自動車の総数

旧 一一〇両・新 一一四両

(総数の内、四両は空港専用タクシーとする。)

2、営業所別配置車両数

本社営業所 旧 七〇両・新 七四両

(条件)

1、空港専用タクシーは、運賃の適用方法に定める中型車以上の車両とする。

2、空港専用タクシーによる輸送は、関西国際空港を発地とする旅客とし、同空港への回送については「空港回送車両」の表示板を掲出して運行すること。

3、空港専用タクシーは、他の用途への変更を認めない。

4、空港専用タクシーは、関西国際空港開港日以後ただちに運行開始をすること。

別紙目録二の一

1、事業者の住所・名称・氏名

大阪市城東区今福東三丁目三番二九号

三菱タクシー株式会社

代表取締役 笹井良則

2、事業の種類

一般乗用旅客自動車運送事業

3、変更しようとする事項

1、事業用自動車の総数

二二一両を二四一両に変更する

(空港専用タクシーの増車)

2、営業所別配置車両数の変更

事業計画新旧対照表(編注・2)のとおり

4、申請理由

関西国際空港が平成六年九月に開港することに伴い、そこに発生する旅客の輸送を重点的に行うため空港専用タクシーを導入して旅客の利便に応えるものです。

尚、本事業計画(空港専用タクシーの増車)変更について、別途免許申請が必要なため、別途申請中であります。

別紙目録二の二

平成六年五月二〇日付けをもって申請のあった一般乗用旅客自動車運送事業の事業計画変更(事業用自動車の総数及び営業所別配置車両数)は、次の条件を附して認可する。

1、事業用自動車の総数

旧 二二一両・新 二二九両

(総数の内、八両は空港専用タクシーとする。)

2、営業所別配置車両数

門真営業所 旧 一七一両・新 一七九両

(条件)

1、空港専用タクシーは、運賃の適用方法に定める中型車以上の車両とする。

2、空港専用タクシーによる輸送は、関西国際空港を発地とする旅客とし、同空港への回送については「空港回送車両」の表示板を掲出して運行すること。

3、空港専用タクシーは、他の用途への変更を認めない。

4、空港専用タクシーは、関西国際空港開港日以後ただちに運行開始をすること。

別紙目録三の一

1、事業者の住所・名称・氏名

大阪府守口市八雲中町一丁目一番一九号

三菱交通株式会社

代表取締役 村上雅一

2、事業の種類

一般乗用旅客自動車運送事業

3、変更しようとする事項

1、事業用自動車の総数

九一両を一〇〇両に変更する

(空港専用タクシーの増車)

2、営業所別配置車両数の変更

事業計画新旧対照表(編注・3)のとおり

4、申請理由

関西国際空港が平成六年九月に開港することに伴い、そこに発生する旅客の輸送を重点的に行うため空港専用タクシーを導入して旅客の利便に応えるものです。

尚、本事業計画(空港専用タクシーの増車)変更について、別途免許申請が必要なため、別途申請中であります。

別紙目録三の二

平成六年五月二〇日付けをもって申請のあった一般乗用旅客自動車運送事業の事業計画変更(事業用自動車の総数及び営業所別配置車両数)は、次の条件を附して認可する。

1、事業用自動車の総数

旧 九一両・新 九五両

(総数の内、四両は空港専用タクシーとする。)

2、営業所別配置車両数

本社営業所 旧 五一両・新 五五両

(条件)

1、空港専用タクシーは、運賃の適用方法に定める中型車以上の車両とする。

2、空港専用タクシーによる輸送は、関西国際空港を発地とする旅客とし、同空港への回送については「空港回送車両」の表示板を掲出して運行すること。

3、空港専用タクシーは、他の用途への変更を認めない。

4、空港専用タクシーは、関西国際空港開港日以後ただちに運行開始をすること。

別紙目録四の一

1、事業者の住所・名称・氏名

大阪附守口市八雲東町一丁目八番二号

三菱興業株式会社

代表取締役 中村時雄

2、事業の種類

一般乗用旅客自動車運送事業

3、変更しようとする事項

1、事業用自動車の総数

九〇両を九九両に変更する

(空港専用タクシーの増車)

2、営業所別配置車両数の変更

事業計画新旧対照表(編注・4)のとおり

4、申請理由

関西国際空港が平成六年九月に開港することに伴い、そこに発生する旅客の輸送を重点的に行うため空港専用タクシーを導入して旅客の利便に応えるものです。

尚、本事業計画(空港専用タクシーの増車)変更について、別途免許申請が必要なため、別途申請中であります。

別紙目録四の二

平成六年五月二〇日付けをもって申請のあった一般乗用旅客自動車運送事業の事業計画変更(事業用自動車の総数及び営業所別配置車両数)は、次の条件を附して認可する。

1、事業用自動車の総数

旧 九〇両・新 九三両

(総数の内、三両は空港専用タクシーとする。)

2、営業所別配置車両数

本社営業所 旧 九〇両・新 九三両

(条件)

1、空港専用タクシーは、運賃の適用方法に定める中型車以上の車両とする。

2、空港専用タクシーによる輸送は、関西国際空港を発地とする旅客とし、同空港への回送については「空港回送車両」の表示板を掲出して運行すること。

3、空港専用タクシーは、他の用途への変更を認めない。

4、空港専用タクシーは、関西国際空港開港日以後ただちに運行開始をすること。

別紙

近運旅二第八二号

平成六年四月一日

大阪陸運支局長殿

近畿運輸局長

関西国際空港開港に伴うタクシー輸送対策の具体的取扱いについて

標記については、平成五年五月一三日付けで基本的輸送対策を明らかにするとともに、「一般乗用旅客自動車運送事業(一人一車制個人タクシーを除く。)の免許申請に関する資格要件について」(平成五年一一月一日付け近運旅二公示第二八号、以下「免許基準」という。)をもって交通圏の変更等について公示したところであるが、これに伴う具体的取扱については、下記によることとしたので了知されるとともに、その運用について遺漏のないよう取り計らわれたい。

なお、これらの対策は関西国際空港利用者に対する基本的輸送力を確保するとともに、事業区域の広域化による効率的輸送と利用者利便の促進を図るべく措置したものであるので、各事業者間の営業形態に急激な変動を生じさせ、特定の地域への輸送力の集中等需給関係の不均衡や輸送秩序の混乱を招くことのないよう留意のうえ、格段の指導を願いたい。

また、関係業界団体長及び(財)大阪タクシー近代化センター長に対しては、別添のとおり通知したので念のため申し添える。

1 泉州交通圏の設定に伴う免許申請等の取扱について

(1) 泉州交通圏内に営業所を有する既免許事業者に対しては、泉州交通圏全域にその事業区域を拡張するための免許申請を行わせるものとする。

事業計画新旧対照表1

旧計画

新計画

1.主たる事業所の名称及び位置

1.主たる事業所の名称及び位置

名称 新三菱タクシー株式会社

旧事業計画に同じ

位置 大阪市北区中津5丁目12番26号

2.営業所の名称及び位置並びに営業所別配置車両数

2.営業所の名称及び位置並びに営業所別配置車両数

名称 本社営業所

名称 本杜営業所

位置 大阪市北区中津5丁目12番26号

位置 大阪市北区中津5丁目12番26号

配置車両数    70両

配置車両数    81両

名称 井高野営業所

名称 井高野営業所

位置 大阪市東淀川区井高野2丁目5番15号

位置 大阪市東淀川区井高野2丁目5番15号

配置車両数    40両

配置車両数    40両

3.事業用自動車の総数及び種別毎の数

3.事業用自動車の総数及び種別毎の数

① 総数   110両

① 総数   121両

② 種別 乗用自動車

② 種別 乗用自動車

110両

121両

大型  5両

大型  5両

中型 105両

中型 116両

4.自動車車庫の位置及び収容能力

4.自動車車庫の位置及び収容能力

名称 本社車庫

名称

位置 大阪市北区中津5丁目12番26号

位置

収容能力   有蓋   82両

収容能力

無蓋   18両

旧事業計画に同じ

名称 第2車庫

名称

位置   大阪市北区中津5丁目12番4号

位置

収容能力   有蓋   14両

収容能力

名称 井高野営業所

名称

位置 大阪市東淀川区井高野2丁目5番15号

位置

収容能力   有蓋   22両

収容能力

無蓋   18両

(2) 上記(1)に基づく免許申請(以下「拡張申請」という。)の受付期間は、「一般乗用旅客自動車運送事業(一人一車制個人タクシーを除く。)の免許及び事業計画変更認可に係る需給に関する基準について」(平成五年一一月一日付け近運旅二公示第二九号、以下「需給基準」という。)の5.(例外措置)―(2)に定めるところにより、平成六年四月一一日から五月二〇日までとし、事案の一括公示を行ったうえで速やかに処理するものとする。

(3) 設定した交通圏の流動実態の推移をみるため、新たに事業区域として拡張された地域での営業所の設置については、当分の間、慎重に対処することとする。

2 空港専用タクシー制度の導入及びその取扱について

(1) 関西国際空港を発地とする旅客の輸送に確実に対応するための基礎的輸送力として、当該輸送に専属的に対応するための「空港専用タクシー」制度を導入する。

事業計画新旧対照表2

旧計画

新計画

1.主たる事業所の名称及び位置

1.主たる事業所の名称及び位置

名称 三菱タクシー株式会社

旧事業計画に同じ

位置 大阪市城東区今福東3丁目3番29号

2.営業所の名称及び位置並びに営業所別配置車両数

2.営業所の名称及び位置並びに営業所別配置車両数

名称 門真営業所

名称 門真営業所

位置 門真市殿島町11番6号

位置 門真市殿島町11番6号

配置車両数   171両

配置車両数   191両

名称 摂津営業所

名称 摂津営業所

位置 摂津市鶴野4丁目274番16

位置 摂津市鶴野4丁目274番16

配置車両数    10両

配置車両数    10両

(別途申請中)

(別途申請中)

名称 今福営業所

名称 今福営業所

位置 大阪市城東区今福東3丁目3番29号

位置 大阪市城東区今福東3丁目3番29号

配置車両数    40両

配置車両数    40両

3.事業用自動車の総数及び種別毎の数

3.事業用自動車の総数及び種別毎の数

① 総数   221両

① 総数   241両

② 種別 乗用自動車

② 種別 乗用自動車

221両

241両

大型  10両

大型  10両

中型 211両

中型 231両

4.自動車車庫の位置及び収容能力

4.自動車車庫の位置及び収容能力

名称 門真車庫

名称

位置 門真市松生町745番6外34筆

位置

収容能力   有蓋   257両

収容能力

名称 摂津車庫

名称      旧事業計画に同じ

位置 摂津市大字乙ノ辻274番16外5筆

位置

収容能力   有蓋   6両

収容能力

無蓋   4両

名称 今福車庫

名称

位置 大阪市城東区今福東3丁目3番29号

位置

収容能力   有蓋   40両

収容能力

ただし、個人タクシー事業者は「空港専用タクシー」制度の対象から除外するものとする。

(2) 空港専用タクシー制度の導入にあたっては、需給基準の3.(期間限定増車)―(1)―①に基づき、恒久増車として処理するものとし、その申請の受付け期間は、需給基準の5.(例外措置)―(2)に定めるところにより、平成六年四月一一日から五月二〇日までとする。

なお、次年度以降の空港専用タクシーの増強等については、需給基準の3.(期間限定増車)に定めるところにより、暫定増車として対応するものとする。

(3) 空港専用タクシーの車両については、国際空港旅客の輸送における様々な状況を勘案し、利用者利便確保のため中型車以上の車両を想定するものとする。

(4) 空港専用タクシー制度導入にあたっての増車については、次に掲げる条件を満たす事業者を対象とする。

① 大阪府――泉州交通圏、大阪市域交通圏、河南交通圏、河南B交通圏のいずれかの事業区域内に営業所を有すること。

② 和歌山県――和歌山市及び海南市の事業区域内に営業所を有すること。

③ ただし、「泉州交通圏」「和歌山市及び海南市」以外の事業区域内に営業所を有する事業者については、車両の効率的運用が可能であり、かつ、運行管理上支障ないと認められる場合に限ることとする。

(5) 申請については、別途定める処理基準に基づき速やかに処理するものとする。

(6) 空港専用タクシー制度の導入にあたっては、基本的車両数を大阪府下においては一七〇両程度、和歌山県下においては一〇両程度を目処に検討することとし、空港利用旅客の状況及び各種交通機関のアクセスの状況等を勘案のうえ、申請の具体的審査の中で車両数を決定するものとする。

(7) 空港専用タクシーの増車認可にあたっては、次の条件を付すこととする。

① 当該車両による輸送は、関西国際空港を発地とする旅客とし、同空港への帰路については回送板を表示して運行すること。

② 当該車両については、定められた「空港専用タクシー」の表示を行うこと。

3 ポイント免許の具体的取扱いについて

(1) 空港専用タクシーによる基礎的輸送力に加え、補完的な輸送力を確保するため、申請に基づき「関西国際空港を発地とする旅客の輸送に限る。」旨の業務の範囲を限定した「関西国際空港の地域」へのポイント免許を付与することとする。

事業計画新旧対照表3

旧計画

新計画

1.主たる事業所の名称及び位置

1.主たる事業所の名称及び位置

名称 三菱交通株式会社

旧事業計画に同じ

位置 守口市八雲中町1丁目1番19号

2.営業所の名称及び位置並びに営業所別配置車両数

2.営業所の名称及び位置並びに営業所別配置車両数

名称 本社営業所

名称 本社営業所

位概 大阪市城東区放出西2丁目11番32号

位置 大阪市城東区放出西2丁目11番32号

配置車両数    51両

配置車両数    60両

名称 守口営業所

名称 守口営業所

位置 守口市八雲中町1丁目1番19号

位置 守口市八雲中町1丁目1番19号

配置車両数    40両

配置車両数    40両

3.事業用自動車の総数及び種別毎の数

3.事業用自動車の総数及び種別毎の数

① 総数   91両

① 総数   100両

② 種別 乗用自動車

② 種別 乗用自動車

91両

100両

大型  5両

大型  5両

中型 86両

中型 95両

4.自動車車庫の位置及び収容能力

4.自動車車庫の位置及び収容能力

名称 本社車庫

名称

位置 大阪市城東区放出西2丁目11番32号

位置

収容能力   有蓋   85両

収容能力

無蓋   12両

旧事業計画に同じ

計    97両

名称 守口車庫

名称

位置 守口市八雲中町1丁目1番19号

位置

収容能力   有蓋   40両

収容能力

事業計画新旧対照表4

旧計画

新計画

1.主たる事業所の名称及び位置

1.主たる事業所の名称及び位置

名称 三菱興業株式会社

旧事業計画に同じ

位置 守口市八雲東町1丁目8番2号

2.営業所の名称及び位置並びに営業所別配置車両数

2.営業所の名称及び位置並びに営業所別配置車両数

名称 本社営業所

名称 本社営業所

位置 大阪市鶴見区横堤3丁目6番51号

位置 大阪市鶴見区横堤3丁目6番51号

配置車両数    90両

配置車両数    99両

3.事業用自動車の総数及び種別毎の数

3.事業用自動車の総数及び種別毎の数

① 総数   90両

① 総数   99両

② 種別 乗用自動車

② 種別 乗用自動車

90両

99両

大型  5両

大型  5両

中型 85両

中型 94両

4.自動車車庫の位置及び収容能力

4.自動車車庫の位置及び収容能力

名称 本社車庫

名称

位置 大阪市鶴見区横堤3丁目6番51号

位置

旧事業計画に同じ

収容能力   有蓋   77両

収容能力

無蓋    45両

収容能力   計    122両

収容能力

(2) ポイント免許の付与にあたっては、次の条件を満たす事業者を対象とする。

① 大阪府下――大阪市域交通圏、河南交通圏、河南B交通圏の各事業区域内のいずれかに営業所を有すること。

③ 和歌山県下――和歌山市及び海南市、那賀郡、海草郡の各事業区域内もしくは伊都郡かつらぎ町の地域内のいずれかに営業所を有すること。

(3) ポイント免許申請の受付期間は、需給基準の5.(例外措置)―(2)に定めるところにより、平成六年四月一一日から五月二〇日までとし、申請については事案の一括公示を行ったうえで、別途定める処理基準に基づき速やかに処理するものとする。

別紙

近運旅二第八五号

平成六年四月一日

大阪陸運支局長殿

近畿運輸局

自動車部長

関西国際空港開港に伴う各種申請の処理について

関西国際空港の開港に伴うタクシー輸送対策の具体化については、平成六年四月一日付け近運旅二第八二号をもって通達したところであるが、これに伴う各種申請の取扱要領及び処理基準を下記の通り定めたので了知されるとともに、周知徹底のうえその取扱に遺漏のないよう努められたい。

なお、関係業界団体長及び(財)大阪タクシー近代化センター長に対しては、別添のとおり通知したので念のため申し添える。

1 泉州交通圏の設定に伴う免許申請について

(1) 泉州交通圏内に営業所を有する既免許事業者が泉州交通圏全域にその事業区域を拡張するための免許申請(以下「拡張申請」という。)については、別添様式1によるものとする。

(2) 拡張申請の処理にあたっては、「一般乗用旅客自動車運送事業(一人一車制個人タクシーを除く。)の免許申請に関する資格要件について」(平成五年一一月一日付け近運旅二公示第二八号、以下「免許基準」という。)及び「一般乗用旅客自動車運送事業(一人一車制個人タクシーを除く。)の免許及び事業計画変更認可に係る需給に関する審査基準について」(平成五年一一月一日付け近運旅二公示第二九号、以下「需給基準」という。)のうち第一項(免許及び増車又は営配認可のための要件)の適用を除外することとする。

2 空港専用タクシーに係る増車申請について

(1) 空港専用タクシーに係る増車申請については、別添様式2によるものとする。

(2) 当該増車申請の処理にあたっては、需給基準のうち第一項(免許及び増車又は営配認可のための要件)及び「一般乗用旅客自動車運送事業の輸送力増強に関する処理について」(平成五年一二月一六日付け近運大旅第五一二六八号及び同日付け近運和輸公示第二号。以下「増車処理基準」という。)の適用を除外することとする。

(3) 一事業者の申請可能両数は、当該事業者の大阪府下、もしくは和歌山県下における専用タクシー対象地域の総認可車両数に一〇%を乗じて得た車両数(一両未満の端数は、一両に切り上げる。)以内で、かつ、二〇両を限度とする。

ただし、泉州交通圏に営業所を有する事業者にあっては、総認可車両数に一〇%を乗じて得た車両数が五両に満たない場合は、五両に切り上げるものとする。

(4) 次に掲げる基準のいずれも満たしていると認められる申請については、速やかに処理することとする。

① 申請の日から過去一年間において、道路運送法等関係法令の違反による行政処分(車両停止以上のものに限る。)を受けていないもの。

② 申請日の前年度の輸送実績における実働率が九〇%以上であるもの、もしくは預かり減車制度の活用等により、実働率が概ね九〇%となると認められるもの。

③ 予定する空港専用タクシーの運行に要する十分な数の運転者の確保の見通しが確実であるもの。

なお、運転者の確保の方法については、増車処理基準3.-(2)を準用するものとする。

④ 予定する空港専用タクシーを含め、当該営業所に配置する全ての車両を収容するための車庫が確保されているもの。

(5) (4)に掲げる基準のうち、①のみに抵触するものについては、当該処分に係る違法行為等についての改善状況等を審査のうえ処理することとする。

(6) 申請車両数が予定する専用タクシーの車両数を上回る場合にあっては、各申請者ごとの事業運営の実態等を審査し、優秀と認められる事業者を優先して車両配分等の調整を行ったうえ、修正認可することとする。

3 ポイント免許申請について

(1) ポイント免許申請については、法人タクシー事業者にあっては別添様式3、個人タクシー事業者にあっては別添様式4によるものとする。

(2) 当該免許申請の処理にあたっては、免許基準及び需給基準のうち第一項(免許及び増車又は営配認可のための要件)の適用を除外することとする。

(3) 申請の日から過去1年間において、道路運送法等関係法令の違反による行政処分(車両停止以上のものに限る。)を受けていない事業者の申請については、速やかに処理を行うものとする。

(4) 上記(3)の基準に抵触するものについては、当該処分に係る違法行為についての改善状況等を審査のうえ処理することとする。

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